- 『NEWSを疑え!』第164号(2012年11月19日特別号)
- ◎テクノ・アイ:米国は豪州から中国の宇宙戦略に睨みを利かす(静岡県立大学グローバル地域センター特任助教・西恭之)
◎編集後記:軍事アレルギーが日本の眼を曇らせている(小川和久)
◎テクノ・アイ(Techno Eye):
米国は豪州から中国の宇宙戦略に睨みを利かす(静岡県立大学グローバル地域センター特任助教・西恭之)
米国のパネッタ国防長官と豪州のスミス国防相は14日、西オーストラリア州パースで会談し、米国が同州に宇宙物体監視用レーダーと宇宙監視望遠鏡(SST)を設置し、両国が共同で運用するための協定に署名した。
米国がアジア上空の人工衛星とスペースデブリ(ロケットの破片や使用済みの衛星など「宇宙ゴミ」)を監視し、中国などアジア諸国から発射された宇宙ロケットを追跡する能力は、このレーダーと宇宙監視望遠鏡の豪州配備によって格段と向上することになる。
宇宙監視望遠鏡(米国防高等研究計画局(DARPA)撮影)
旧ソ連が世界初の人工衛星を軌道に乗せた1957年以来、米軍は宇宙空間の物体を監視しており、現在は世界29カ所のレーダーと望遠鏡で約1万個の物体を監視している。ゴルフボールの大きさ以上の物体なら、全てを把握しているとされる。
それが過去20年ほど、中国が宇宙空間の軍事利用を進める一方で、米軍による東アジア上空の監視体制は手薄になっていた。
米軍は深宇宙監視用の望遠鏡を韓国から1993年に撤去した後、インド洋中部のディエゴガルシア島、太平洋中部のマーシャル諸島、北太平洋のアリューシャン列島の間の広大な地域において、固定式の宇宙空間監視システムを運用してこなかったからだ。
そうした宇宙監視の間隙を埋めるべく、米豪両国は今回、カリブ海に配備されている比較的旧式のCバンドレーダーと、まだ1台しか完成していない最新型の望遠鏡を豪州に移設することで合意した。