- 『NEWSを疑え!』第210号(2013年5月23日号)
- 【今回の目次】
◎ストラテジック・アイ(Strategic Eye)
◇◆北朝鮮の軍事行動には「ルール」がある
◆目指す目標は「インド」
◆米国をモデルに「核開発と経済建設」
◆北朝鮮の軍事行動は『安全地帯』のみ
◎セキュリティ・アイ(Security Eye)
・海洋安全保障で台湾とフィリピンの対中共闘は無理?
(静岡県立大学グローバル地域センター特任助教・西恭之)
◎ミリタリー・アイ(Military Eye)
・米国が「橋下慰安婦発言」に猛反発する背景(西恭之)
◎編集後記
・まだまだ日本の政治家は日米同盟を理解していない
◇◆北朝鮮の軍事行動には「ルール」がある
国際変動研究所理事長 軍事アナリスト 小川和久
Q:2013年4月30日、米韓両軍が3月から続けていた大演習「フォール・イーグル」が終わりました。5月に入ると、北朝鮮が日本海側に展開した中距離弾道ミサイルを撤去したと報道され、軟化姿勢が見えはじめたようにも思います。いかがですか?
小川:「フォール・イーグル演習は、韓国軍20万人以上と米軍1万人以上が参加して、上陸演習をはじめ地上機動・空中・海上・特殊作戦などの実機動連合演習をおこないました。米軍はイージス艦、B-52戦略爆撃機、原子力潜水艦を投入したほか、B2ステルス爆撃機2機が米本土ホワイトマン空軍基地から参加し、黄海のジク島に訓練弾を投下して帰投。往復2万キロ以上を無着陸で飛び、北朝鮮にアメリカの『核の傘』を見せつけました。沖縄・嘉手納基地に展開中のF22ステルス戦闘機も2機が演習に参加、北朝鮮側を緊張させたと伝えられています」
「3月11日から10日間、2013キー・リゾルブ演習もおこなわれました。こちらは韓国軍1万人、米軍3500人余りが参加した指揮所中心の訓練です。北朝鮮は、これらの演習に強く反発。移動式発射台に搭載する中距離弾道ミサイルのムスダンを日本海側に展開し、アメリカ、韓国、日本などに対する恫喝や挑発を繰り返しました。4月以降の主な動きをまとめておきましょう。なお、3月分は4月18日号に掲載済みです」
【最近の北朝鮮の動き】(3回目の核実験以降)
・韓国国防省によれば「日本海沿岸に展開のムスダン2基撤去。継続監視中」(5月7日)
・ロイター通信が「中距離ミサイル・ムスダンを発射台から撤去」と報道(5月6日)
・逮捕・拘束の韓国系米国人ペ・ジュンホ氏に最高裁が15年の労働教化刑(4月30日)
・開城を撤収する韓国人50人のうち7人に対し帰還不許可の嫌がらせ(4月29日)
・韓国聯合ニュースが、北朝鮮陸空軍が黄海沿岸で大規模演習を準備と報道(4月28日)
・朝鮮中央通信が、昨年11月拘束の米国人を近く最高裁に起訴と報道(4月27日)
・韓国が開城工業団地に残留する韓国人従業員ら176人全員を撤収と発表(4月26日)
・朝鮮人民軍最高司令部が、ソウルで金正恩第1書記の写真が焼かれたとして、韓国に「予告なし報復」「軍事的示威行動」を即時開始という「最後通牒」を発表(4月15日)
・韓国側の開城正常化対話提案を「狡猾な術策」「実のない殻」と一蹴(4月14日)
・朝鮮中央通信が「好戦的な米がありもしない挑発をとやかく言う」と非難(4月13日)
・「朴槿恵政権が対決追求すれば開城工業団地は存続できず」と名指しで批判(4月11日)
・労働新聞が「日本は1940年代の核の惨禍と比べられない災難被る」と威嚇(4月10日)
・アジア太平洋平和委が「核戦争前夜」「在韓外国人は退避対策を」と談話(4月9日)
・中距離弾道ミサイル・ムスダン2基の東海岸への移動を米政府が確認(4月9日)
・開城工業団地の北従業員5万人以上の撤収と共同事業の一時中断を表明(4月8日)
・各国の在平壌外交使節団に「4月10日以降の安全を保証できず」と退去勧告(4月5日)
・「北朝鮮が日本海側に中距離弾道ミサイルを移動」と、韓国国防相(4月4日)
・朝鮮人民軍参謀部が「米敵視政策を小型化・多様化された核攻撃で完全粉砕」と恫喝(4月4日)
・開城工業団地への韓国側従業員立ち入り禁止を通告(4月3日)
・寧辺核施設の黒鉛減速炉「再整備・再稼働」を表明(4月2日)
3月28日、B2ステルス爆撃機2機がミズーリ州ホワイトマン
空軍基地から韓国へ往復し、フォール・イーグル演習に参加した