- 『NEWSを疑え!』第218号(2013年6月20日号)
- 【今回の目次】
◎ストラテジック・アイ(Strategic Eye)
◇◆軍事力を「教科書通り」に使う
◆米韓合同演習の絶妙な海域設定
◆アメリカは『孫子』の信奉者
◆『マハンの使徒』としてのアメリカ
◎セキュリティ・アイ(Security Eye)
・中国企業が太平洋、大西洋を結ぶ大運河を建設
(静岡県立大学グローバル地域センター特任助教・西恭之)
◎ミリタリー・アイ(Military Eye)
・シリア情勢を通じてイランを消耗させる米国の戦略(西恭之)
◎編集後記
・「海兵隊は日本を守らない」という議論
◇◆軍事力を「教科書通り」に使う
国際変動研究所理事長 軍事アナリスト 小川和久
Q:北朝鮮の核実験や弾道ミサイル発射、中国船の尖閣諸島周辺への出没などに対して、日本では「さっさと自衛隊を出せ」「わがほうの軍事力を見せつけよ」といった短絡的な議論が起こりがちです。たとえば敵基地攻撃論がそうですね。敵がミサイルを発射する前に基地を先制攻撃してしまえ、攻撃は最大の防御だ、というわけですが、世界の専門家は『子供じみている』と首をかしげています。今回は、軍事力のまっとうな使い方について、小川さんの考えを聞かせてください。
小川:「軍事力というのは、ただ相手を上回る強力な軍隊を備えておき、何かあればそれを投入して威嚇し、衝突が起こったときは相手を圧倒しさえすればよい、といったものではありません」
「いうまでもなく軍事力は、戦争をしないために備えるべき『力』の一つです。そして、軍事力には、正しい行使の仕方、いわば『教科書通りの使い方』があるのです。今回は、そのことを、実例を示してお話しすることにしましょう」
「まだ記憶に新しく、日本の周辺で起こった実例として、2010年11月末に米軍が韓国と合同でおこなった軍事演習を取り上げます。この米韓合同軍事演習は、北朝鮮による延坪島《ヨンビョンド》砲撃の5日後に始まりましたが、演習海域の設定が絶妙で、まさに『教科書通り』でした」
延坪島砲撃事件:2010年11月23日、朝鮮人民軍が大延坪島に向けて突然、
砲弾170発を発射、80発が同島に着弾した。同島の韓国軍は北朝鮮の砲台に
砲弾80発を射撃して対抗した。韓国の海兵隊員2名、民間人2名が死亡した
(原図は米陸軍が1955年に作成)