『NEWSを疑え!』は有料メールマガジンコンテンツです。バックナンバーは会員登録をされた方のみ読む事が出来ます。
  • 会員登録をされていない方は「購読する」ボタンより購読手続きを行って下さい。
  • 購読する

  • 会員の方は枚ページログイン後「バックナンバーを読む」ボタンよりお読みいただけます。
  • バックナンバーを読む

『NEWSを疑え!』第255号(2013年11月18日特別号)

『NEWSを疑え!』第255号(2013年11月18日特別号)
◎テクノ・アイ(Techno Eye)
・北極圏開発を目指すロシアの野心的人工衛星網
(静岡県立大学グローバル地域センター特任助教・西恭之)
◎編集後記
・なぜアラファトは拳銃を持ち込めたか(小川和久)

◎テクノ・アイ(Techno Eye):

・北極圏開発を目指すロシアの野心的人工衛星網

(静岡県立大学グローバル地域センター特任助教・西恭之)

 一般的な通信衛星や気象衛星は、赤道上空の静止軌道を周回しているので、高緯度地域における利用に適していない。北極圏の石油・天然ガスや航路の開発を重視するロシアは、そうした問題を克服する目的で北極上空をゆっくりと通過する軌道に、アルクティカ(北極)衛星10基を打ち上げて協調動作させる計画を進めている。

 通信衛星から地上局が受信する電波は、衛星が天頂に近いほど強力だが、赤道上空の通信衛星は高緯度地域の地平線近くから昇ることがないので、北極圏に電波を送信する衛星は電力を大量に消費することになる。消費電力の大きな衛星は、太陽電池など電源が大型化することになり、打ち上げ費用も高価になることは避けられない。

 赤道上空の気象衛星からは、北緯・南緯60度以上の雲や雨は、地球の球面によって大きく湾曲して見えるので、観測が難しいという問題もある。北極と南極の上空を通る、高度1000キロ以下の円軌道に衛星を乗せると、緯度に関係なく、特定の地域を毎日同じ時間に観測することができるが、こうした極太陽同期軌道上の衛星は、100分以下で地球を一周するので、特定の地域の上空にとどまって観測することはできない。

 そこで旧ソ連は、赤道に対する軌道傾斜角63.4度、近点高度500キロ、遠点高度4万キロ、軌道周期11時間58分の楕円軌道を、1965年から利用してきた。このモルニヤ軌道上の衛星は、軌道周期の半分の6時間の間、北緯55.5度以上の上空をゆっくりと飛行し、地球を2周するたびに同じ地域の上空を飛行する。



モルニヤ軌道。点と点の間の飛行時間はいずれも1時間。

高緯度地域(この場合は北極)上空をゆっくりと飛行する

(米航空宇宙局)