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『NEWSを疑え!』第360号(2015年1月5日特別号)

『NEWSを疑え!』第360号(2015年1月5日特別号)
◎テクノ・アイ(Techno Eye)
・疑問が多い北朝鮮サイバー攻撃説
(静岡県立大学グローバル地域センター特任助教・西恭之)
◎編集後記
・30年間も思い込んでいたとは…(小川和久)

◎編集後記

・30年間も思い込んでいたとは…

 明けましておめでとうございます。本年もよろしくご愛読を賜りますよう、お願い申し上げます。

 そこで新年第1号ですが、私自身の反省から始めたいと思います。

 このメルマガのタイトルはご承知の通り『NEWSを疑え!』です。民主主義を機能させ、世界と日本の平和と安全を実現していくには、国民(納税者)の代表に位置づけられるジャーナリズムの健全化が必要との立場から、新聞の誤報についても指摘を繰り返し、新聞倫理綱領が謳う「歴史の記録者」として正しい情報に基づく訂正記事を掲載するよう求めてきたわけです。

 もちろん、我が身についても誤りを正していくことは言うまでもありませんが、昨年12月、愕然とさせられた出来事がありました。

 なんと、過去30年間にわたって正しいと思い込み、それに基づいた記述もしてきた情報が間違っていることに気づかされたのです。

 どこからも指摘されたこともなく、その誤りが何かに影響を及ぼしたということはないと思いますが、「思い込み」ということがいかに恐ろしいことか、それが国家国民の平和と安全を左右するようなことだった場合、どのような結果をもたらしただろうかと思うと、冷や汗が流れる思いでした。

 昨年12月22日号に「沖縄米軍基地をめぐる数字の見え方」というタイトルで編集後記を書きましたが、それを脱稿して同僚の西恭之氏(静岡県立大学特任助教)に校閲を依頼した段階で、私の「思い込み」が明らかになったのです。

 お届けした編集後記では、「例えば、第3海兵遠征軍司令官が務める沖縄米軍のトップ『四軍調整官』のオフィスがあるキャンプ・フォスターに、同じ司令官が勤務する第3海兵遠征軍司令部(キャンプ・コートニー)を統合することは、できない話ではありません。」という言い回しになっていた部分は、最初は「例えば、第3海兵遠征軍司令官が務める沖縄米軍のトップ『四軍調整官』のオフィスがあるキャンプ・バトラーを、同じ司令官が勤務する第3海兵遠征軍司令部(キャンプ・コートニー)に統合することは、問題なくできる話です。」と書かれていました。私は1984年8月4日に在沖縄海兵隊司令部を取材し、そのような説明を受け、そのまま信じ込んできたわけです。

 ところが、西恭之氏の指摘では「キャンプ・バトラー」とは「7つの海兵隊施設の総称」だというのです。

 当時のことを思い出してみると、在沖縄海兵隊司令部ではクーンさんという任官ほやほやだとわかる海兵隊の女性少尉が広報担当で、データが記されたファクトシートをもとに沖縄に駐留する海兵隊の概要を説明してくれたのですが、そのおり「キャンプ・バトラー」とは私がクーンさんと向き合っている基地のことだという前提で話が進んでいったのは間違いありません。

 それだけだと、クーン少尉が新米だったから間違えたのか、私の思い違いかのどちらかということになりますが、クーン少尉と別れて海兵隊が提供してくれたハンビー(四輪駆動車)で1時間かけて第3海兵遠征軍司令部があるキャンプ・コートニーに移動したあとも、広報担当の女性中尉の口から「キャンプ・バトラーでお聞きになったと思いますが…」という言葉が出てきたのです。

 むろん、このときの取材をもとに単行本『在日米軍』(講談社)を出版したあと、「キャンプ・バトラー」について詳しく知っているはずの沖縄のマスコミからも、私の記述が間違っているという指摘はありませんでした。

 いま考えてみると、私が取材した当時は「キャンプ・バトラー」は独立した存在であり、そのあと7カ所の基地の総称に変わったのかもしれない、という可能性です。

 今回わかったのは、「キャンプ・バトラー」はキャンプ・フォスター司令部ビルにあるということでしたが、私が取材で通されたのは「キャンプ・バトラー」という海兵隊基地の中の独立した低層建築で、1階に広報のオフィスがありました。

 機会をみて、その間の経緯を知る手がかりを資料で確認してみたいと思いますが、在沖縄海兵隊のホームページによれば、現在の「キャンプ・バトラー」は西恭之氏が指摘したとおり以下の7カ所の基地の総称です。

 キャンプ・ゴンザルベス、キャンプ・シュワブ、キャンプ・ハンセン、キャンプ・コートニー、キャンプ・フォスター、キャンプ・レスター、キャンプ・キンザー



(「在沖縄米国海兵隊バトラー基地」公式サイト)

 そして、在沖縄海兵隊のホームページは、次のように説明しています。

バトラー基地は、沖縄県北中城村(きたなかぐすくそん)石平に所在する米海兵隊施設キャンプ・フォスター司令部ビルに位置し、その任務は、沖縄県内にある全ての海兵隊施設や駐留する海兵部隊の訓練場、職場施設の断続的かつ合理的なサービスを提供することで、海兵隊が効果的に訓練を実施し、日米安全保障の任務を遂行できるように必要な支援を行っています」

 上記のような誤報を避けるには、米軍、自衛隊を問わず、組織や装備などについては定期的に、そして記述するたびにチェックすることしかないことを思い知らされました。

 いま、誤報を避けるための王道など存在しないことを、あらためてかみしめています。

 それにしても、30年間も思い込んでいたとは…。

(小川和久)