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『NEWSを疑え!』第376号(2015年3月5日号)

『NEWSを疑え!』第376号(2015年3月5日号)
◎ストラテジック・アイ(Strategic Eye)
◇◆軍事報道の読み方――実は…
◆中国軍は台湾に上陸できない
◆「中国から尖閣まで1分」は大ウソ
◆戦闘機は意外と長く飛べる
◎セキュリティ・アイ(Security Eye)
・残虐行為を戦略として実行する「イスラム国」
(静岡県立大学グローバル地域センター特任助教・西恭之)
◎ミリタリー・アイ(Military Eye)
・強襲揚陸艦の対ロ輸出とウクライナ情勢(西恭之)
◎編集後記
・本物の訂正記事が出ない訳

◎編集後記

・本物の訂正記事が出ない訳

 2月26日号の編集後記で、「このくらいの訂正記事は出そうよ」と書きましたが、今回は2月26日号で例示したレベルの訂正記事がなぜ出ないのか、その理由を考えてみたいと思います。

 たとえば2月28日の読売新聞朝刊にも、次のような訂正記事が掲載されています。

 訂正 おわび 27日【政治】「『政治とカネ』防戦続く」の記事で、一部地域で「他の官僚にも追及を広げる考えだ」とあるのは、「他の閣僚」の間違いでした。入力ミスでした。

 2月26日号で例に挙げた朝日新聞(2月22日朝刊)の場合は、次のようなものでした。

「21日付『自衛隊配備 島を二分』の写真説明で、『在来種「与那国馬」』とあるのは『馬』の誤りでした。沖縄県・与那国島では与那国馬が放牧されていますが、写真の馬は雑種でした。関係者への確認取材が不十分でした。訂正しておわびします。」

 もちろん、これまでお伝えしてきたように朝日も読売も訂正記事をきちんと出すことについては、社告などで表明しています。

 それなのに、集団的自衛権と集団安全保障の混同(朝日)、地対艦ミサイルに関する事実誤認(読売)が、再三指摘されても、そして内部的には誤報だと確認されていても、訂正記事が出ないのはなぜでしょう。

 理由ははっきりしています。上に挙げた「入力ミス」や「関係者への確認取材が不十分」の記事を書いたのは、若手か組織の末端の記者です。訂正記事を出すについても、そうした記者たちの立場を斟酌したりする必要などありません。「バカもん!」「気をつけろよ!」と言って、訂正記事を出せばよいだけです。はっきり言って、社内的に誰も傷つかないレベルの誤報だから訂正記事を出してくるのです。

 ところが、集団的自衛権と集団安全保障を1面トップで混同した朝日の記者、地対艦ミサイルについて事実誤認のまま報道した読売の記者は、いずれも40歳前後の中堅で、記者としては順調なコースを歩いています。

 そうなると、会社としても経歴に傷をつけたくないという思いもあるでしょうし、これくらいの中堅記者だと社内に必ず「親分」がいて、編集局の幹部に対して「俺の手下(テカと呼びます)だしよぉ、カンベンしてやってくれねえか」と言って、庇ったりする。

 かくして、新聞倫理綱領にある「新聞は歴史の記録者」といった使命感も、「社会の木鐸」という矜恃もどこへやら、チンピラやくざさながらの内輪のやり取りのなかで、誤報がうやむやにされてしまうのです。

 昨年、社長の退任にまで発展し、新聞業界全体が読者の信用を失い、大幅の部数減に至った朝日新聞の事態(慰安婦問題での「吉田証言」、福島第1原発事故での「吉田調書」)の根底には、長年にわたって体質改善を怠ってきた結果、深刻な成人病に冒された新聞業界の姿が浮き彫りになっていました。

 朝日も読売も、同じことを繰り返さないためにも、どんな誤報にも訂正記事を出し、「歴史の記録者」としての責任を果たすよう望んでやみません。

 最後に、2014年8月21日号で朝日新聞に対して出した提言を再掲しておきます。

1)誤報だったことを明記した訂正記事を、紙面の目立つ部分に掲載し、誤報をもとに国会質問が行われたり、研究者の論文に引用されたりしないよう、「歴史の記録者」(新聞倫理綱領)としての責任をとること。

2)既に行われた誤報をもとにした国会質問については、質問者と国会の議事録作成当局に通告し、議事録にも訂正が行われるようにすること。

3)誤報が出た場合の社内ルールを定め、筋の通らない言い訳(7月28日号 朝日新聞社内で聞こえる「言い訳」)がまかり通ったり、後輩や部下を庇おうとする社内政治が訂正記事の掲載を阻むことがないようにし、日本新聞協会に「朝日新聞モデル」として提案する。

4)社内ルールを定めるにあたっては、第一線の記者の萎縮や自主規制を防ぐうえでも、誤報した記者の処罰は行わないものとし、あくまでも「歴史の記録者」としての責任を果たし、読者の信頼を勝ち取るために訂正記事を掲載することを明記する。

 私は、月刊『ジャーナリズム』を刊行し、社内的にも「ジャーナリズム学校」を開設している朝日新聞の姿勢を評価したいという立場です。読売新聞にも期待しているところがあります。裏切ってほしくないという気持ちでいっぱいです。

(小川和久)