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『NEWSを疑え!』第23号(2011年6月20日特別号)

『NEWSを疑え!』第23号(2011年6月20日特別号)
◎セキュリティ・アイ(加筆版):中国は「水との戦争」で衰退する?(主任研究員・西恭之)
◎ミリタリー・アイ(加筆版):オスプレイは危険、という議論の根拠は(主任研究員・西恭之)
◎編集後記:(菅さんではない)総理大臣への手紙

セキュリティ・アイ(Security Eye):

◇◆中国は「水との戦争」で衰退する?(主任研究員・西恭之)

 水資源不足に悩む中国が、国家の命運を懸けて長江に建設した三峡ダム暗雲がたれ込めている。三峡ダム問題が悪化すれば、長江の水を華北地方に運ぶ一大国家的事業も共倒れとなり、中国の経済成長の足を引っ張るばかりでなく、世界経済悪影響をもたらす恐れすら懸念される。

 中国政府は5月18日、温家宝首相が主宰する国務院常務会議の名において、三峡ダム(湖北省宜昌市)には「緊急対応すべき多くの問題もある」との見解を発表した。ダム建設移住を余儀なくされた周辺住民140万人への一層の対策が必要だと強調し、環境保護土砂崩れ地震への対策を求めている。

 長江中流の三峡地域に巨大ダムを建設して洪水防ぐ構想は、時代を隔てて孫文毛沢東が提唱した。建設計画は、中ソ対立によるソ連の技術援助停止と文化大革命の混乱でいったん表舞台から姿を消したが、1980年代に再浮上した。それに伴って、既存のダムの土砂堆積問題などを根拠とする反対論も噴出したが、天安門事件にまぎれる格好で封殺されてしまった。それでも反対論は根強く残り、建設を承認した1992年4月の全国人民代表大会での賛成票67%と、全人代としては異例の低さにとどまった。

 三峡ダムは1993年1月に着工され、2006年5月に本体完成した。堰堤の高さ185メートル、堰堤の長さ2309メートル、ダム湖総延長600キロ、重慶直轄市の東部にまで及んでいる。2010年10月、水位175メートルに達し、2006年に設置された発電機26基による年間発電能力は84.7テラワット時を記録した。これは水力発電所としては世界最大で、中国電力消費量2%以上をまかなうことができる。

 ところが、今年5月から6月にかけて長江中下流地域は50年ぶりの大干ばつに見舞われた。江西省北部にある中国最大淡水湖、鄱陽湖の90%干上がるという事態が発生し、農民漁民の間に、干ばつを悪化させた原因三峡ダムにあるのではないか、との疑いと対策を怠った政府に対する不満が広がることになった。

 長江中下流地域は昨年夏、干ばつとは逆の大洪水に見舞われており、このとき住民疑い不満は、三峡ダムの設計水位まで水を貯めれば洪水被害を軽減できたのに、ダム決壊を恐れた政府放水選択し、洪水を引き起こしたのではないか、という点に集中していた。

 三峡ダムが洪水と干ばつ双方の原因になったとは考えにくいが、そのような疑いと不満が生じ、広がること自体、三峡ダム建設に伴う移転などに関する住民の不満の根強さを物語っている。

 実を言えば、水圧を原因とする土砂崩れや、長江によって運ばれた貯水池埋まる危険性については、以前から国務院の三峡工程建設委員会が認めていた。三峡ダムは、そうした指摘にフタをする形で建設が進められたのだった。