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『NEWSを疑え!』第29号(2011年7月11日特別号)

『NEWSを疑え!』第29号(2011年7月11日特別号)
◎セキュリティ・アイ:イスラム過激派を支えるソマリア海賊への身代金(主任研究員・西恭之)
◎ミリタリー・アイ:米国の巨大空母時代に終わりは来るか(主任研究員・西恭之)
◎編集後記:暑中お見舞い申し上げます

セキュリティ・アイ(Security Eye):

◇◆ロシアと中国に買われるギリシャ国有企業(主任研究員・西恭之)

 ペルシャ湾岸産油国や欧州と往来する商船を脅かしているソマリア海賊が、今度はソマリア南部で勢力を拡大しているイスラム過激派アルシャバブに身代金の一部を上納していることが明らかになり、身代金の支払いをめぐって世界の海運業界に衝撃が走っている。

 アルシャバブは米英などの政府によってテロ組織に指定され、経済制裁の対象とされている。海賊が身代金の一部をアルシャバブに上納しているということは、間接的にではあるにせよ、経済制裁を無効にすることになりかねず、場合によっては経済制裁に違反したと認定される場合もあり得るからだ。

 国連薬物犯罪事務所によると、ソマリア南部の都市キスマヨから出港して海賊対処部隊に逮捕された海賊の供述によれば、アルシャバブに上納金を払わなければ海賊行為は不可能な状態となっており、今年2月、ソマリア中部ハラデレで海賊の首領を拘束したアルシャバブは、身代金の20%を上納することを約束させたとされる。

 各国が身代金上納に神経を尖らすのは、アルシャバブとアルカイダの関係である。アルシャバブの幹部アフメド・アブドルカディル・ワルサメは、「アラビア半島のアルカイダ」との連絡役であるとの疑いで、今年4月に海上で米海軍に逮捕され、7月になって米国で起訴されており、ヘタをすると支払った身代金がアルカイダの資金となり、テロの形で戻ってくることさえある。

 海賊とイスラム過激派との関係が深まり、イスラム過激派が海賊を「格好の金ヅル」とみなして、搾り取ろうとするほどに、海賊の手口も高度化する傾向を見せている。

 海賊が身代金を情報通信機能に投資し、被害船を流用した海賊母船と搭載した高速モーターボートを、ソマリアの陸上基地から衛星電話とGPSを使って指揮していることは、これまでにも明らかだった。ソマリアから2000キロ以上離れたインドやマダガスカルの沖合にいる船舶への襲撃を計画できるのは、テロ対策として導入された自動船舶識別装置(AIS)を悪用しているためである。

 当然、身代金の金額も増加傾向にある。サウジ・アラムコ系列のタンカー「シリウス・スター」をソマリア南部の700キロ沖で乗っ取った海賊は、2009年1月に身代金300万ドル(3億円)を手にした。この当時、ソマリア北東部のイールという町が海賊の本拠地として有名だったが、その後、海賊はソマリア南部を中心に拠点を移動させる傾向が強まった。

 その後、韓国の三湖海運は2010年4月から11月まで捕らわれていたタンカー「サムホ・ドリーム」と船員を釈放させるために950万ドル(7.7億円)を支払い、身代金額の記録を更新した。2010年にソマリア海賊が得た身代金は合計2億4000万ドル(200億円)、1隻当たり平均540万ドルと推定されている。

 AISは、高額の身代金と交換できそうな船を探すためにも悪用されている。

 AISは船名・位置・針路・速力・目的地などのデータを発信するVHF無線機で、受信したデータを電子海図上やレーダー画面上に表示することもできる。テロ対策のために国際海事機関(IMO)の主導によって海上人命安全条約(SOLAS)が改正され、2004年に発効し、300トン以上の国際航海する船舶への搭載が各国の法律で義務付けられた。