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『NEWSを疑え!』第35号(2011年8月1日特別号)

『NEWSを疑え!』第35号(2011年8月1日特別号)
◎セキュリティ・アイ:独裁体制に翳りが見えたエネルギー大国カザフスタン(主任研究員・西恭之)
◎ミリタリー・アイ:台湾へのF16供与、米国は現有機改修に方針変更?(主任研究員・西恭之)
◎編集後記:武田頼政著『ブルーインパルス』

セキュリティ・アイ(Security Eye):

◇◆独裁体制に翳りが見えたエネルギー大国カザフスタン(主任研究員・西恭之)

カザフスタンのナザルバエフ大統領(71歳)の後継者問題がエネルギー業界を中心に世界的な注目を集めている。

 ナザルバエフ大統領は7月11日、「短期休暇中」との短信を公式ウェブサイトに載せたあと姿を消した。20日になってドイツで前立腺の手術を受けていたことがマスコミ報道によって明らかになった。大統領は21日までに帰国し、職務に復帰したが、一国の元首が行方をくらましたことが、後継者問題への国際的な懸念に拍車をかけることになった。

 カザフスタンは旧ソ連時代末期から20年以上、ナザルバエフ大統領の強権的な統治が続いているが、石油・天然ガス・石炭・ウランが豊富なだけでなく、中国・ロシア・カスピ海の間の戦略的な位置にあり、それゆえカザフスタンの後継者問題は、ユーラシア各国のエネルギー供給を考える上でのリスク要因となってきた。

 カザフスタンの油田の大部分は、カスピ海と北西部のロシア国境付近に集中しており、特にカスピ海沿岸のテンギス油田の埋蔵量はメキシコ湾岸に匹敵するとされる。カスピ海沖合ではさらに大きなカシャガン油田が2000年に発見されており、カシャガン油田の開発は、冬にカスピ海が凍るため難航しているが、この地域が中東以外では最大の油田地帯であることは間違いない。

 資源開発のため、過去20年間で合計1200億ドル(10-16兆円)の外資がカザフスタンに流入した。この資金と技術によって、いまやカザフスタンは原油生産高で世界10位の座をうかがうまでのエネルギー大国となっている。

 テンギス合弁企業の出資比率は、米国のシェブロンが50パーセント、エクソンモービルが25パーセント、カザフスタン国有石油・ガス会社「カズムナイガス」が20パーセント、ロシアのルクオイルが5パーセントとなっている。カシャガン油田には、欧米メジャーとカズムナイガスのほか、日本の国際石油開発帝石も7.56パーセントを出資している。

 当然のことながら、カザフスタンは石油開発・生産・販売の提携相手と輸出ルートの多様化を積極的に推進している。

 もともと旧ソ連時代からのパイプラインはロシア国内を経由しており、テンギスの石油もロシアの黒海沿岸を経由して輸出されてきたが、そこに中国が加わり、新たな様相を呈してきた。中国は、ペルシャ湾等からの海上のオイルルートを米国に押さえられることを懸念し、陸続きのカザフスタンにパイプラインを設置、2009年以降、カスピ海の油田・ガス田から中国向けのエネルギー供給が行なわれるようになった。

 カザフスタンの外交的したたかさは、エネルギー供給の決定権を握ったまま、広大な国土を横断するパイプラインを中国に建設させた点に現れている。この石油パイプラインの主な供給源であるカシャガン油田開発には、中国資本は出資できていないからだ。ガスパイプラインの方も、ガス輸出国のトルクメニスタンからカザフスタン経由で中国に延びており、カザフスタンは中国のエネルギー供給の死命を制する位置に立ったとさえいえるほどだ。

 エネルギーだけでなく、カザフスタンにとって中国は最大の貿易相手国となっている。カザフスタンが世界最大の生産高を誇るウランについても今年2月、今後10年間で5万5000トンを中国に輸出することが、ナザルバエフ大統領と胡錦濤主席との首脳会談で決定された。