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『NEWSを疑え!』第54号(2011年10月11日特別号)

『NEWSを疑え!』第54号(2011年10月11日特別号)
◎セキュリティ・アイ:国連海洋法条約批准が米国にもたらすメリット(主任研究員・西恭之)
◎ミリタリー・アイ:小論文『金正日を悩ます方法』のリアリティ(主任研究員・西恭之)
◎編集後記:安く買いたい次期主力戦闘機(FX)

セキュリティ・アイ(Security Eye):

国連海洋法条約批准が米国にもたらすメリット(主任研究員・西恭之)

 米国内には、中国の海洋進出と接近阻止・領域拒否(英語: Anti-Access/Area Denial, A2AD)戦略に関連して、「中国は米海軍を排他的経済水域から閉め出す根拠に国連海洋法条約を悪用している」との見方がある。

 目下、米国内では条約(米国は1994年に署名)の上院による批准の動きに対して、反対論が頭をもたげている。その代表格は9月29日、ジョン・ボルトン氏(元国連大使)とダン・ブルーメンソール氏(アメリカン・エンタープライズ研究所研究員で中国安全保障政策専門家)が『ウォール・ストリート・ジャーナル』に寄稿した論文だろう。

 確かに、国連海洋法条約を「悪用」しているとするボルトン、ブルーメンソール両氏の中国認識には、正しい面も含まれている。しかしながら、それだけでは米国が国連海洋法条約批准に反対する理由にならないし、国連海洋法条約こそがA2AD戦略に関する中国の主張を覆す強力な武器になり得る、という認識が抜け落ちている点で、両氏の反対論には重大な欠陥があると言わざるを得ない。

 国連海洋法条約(海洋法に関する国際連合条約)は、海洋に関する慣習法を法典化し、現代の沿岸国の新たな主張に対応することによって、領海・接続水域・排他的経済水域・大陸棚・公海における各国の権利と義務を定め、同時に海底資源管理や紛争解決の制度を設けている。

 1982年に各国の署名が始まり、1994年、60カ国の批准によって発効した。現在までに162カ国が批准している。日本は1983年に署名したが、他の先進国同様、海底資源管理に関する部分が1994年に改正されるのを待つ形で、1996年に批准した。

 慣習法は公海における情報収集などの軍事的活動を認めているが、国連海洋法条約は排他的経済水域における外国軍の活動について記していない。ここに解釈の幅が生じる原因がある。

 国際的に主流となっている解釈(米国などが採用)は、沿岸国は排他的経済水域に関する条約が言及していない活動について制限・禁止する権利を持たない、というものである。

 これに対して中国は、国連海洋法条約が排他的経済水域での軍事活動を認める文言を使用していないことを根拠に、自国の排他的経済水域だと主張している南シナ海について、米国など外国海軍による情報収集に反対し、妨害する動きに出ている。

 しかし、排他的経済水域では資源に関する主権的権利しか認められていない。中国が行なっている外国軍の活動への規制は主権の行使そのものであり、これを既成事実化することは領海と排他的経済水域の区別を曖昧にする点で、大きな問題がある。条約の解釈としては、中国の立場は不利だと言ってよいだろう。

 これを眺めると、中国に対する米国の主張の根拠は慣習法で十分だというボルトン、ブルーメンソール両氏の批准反対論は、明文化された条約の解釈をめぐって中国と論争している現状では不十分で、誤っているとさえいえることが明らかになる。言うまでもなく、自国が採用している条約の解釈を加盟国に主張するためには、米国自身が条約に加盟しているほうが有利だからである。