『NEWSを疑え!』は有料メールマガジンコンテンツです。バックナンバーは会員登録をされた方のみ読む事が出来ます。
  • 会員登録をされていない方は「購読する」ボタンより購読手続きを行って下さい。
  • 購読する

  • 会員の方は枚ページログイン後「バックナンバーを読む」ボタンよりお読みいただけます。
  • バックナンバーを読む

『NEWSを疑え!』第56号(2011年10月17日特別号)

『NEWSを疑え!』第56号(2011年10月17日特別号)
◎セキュリティ・アイ:イランがメキシコ麻薬組織を使って駐米サウジ大使を暗殺するか?(主任研究員・西恭之)
◎ミリタリー・アイ:アフガン最強の反米勢力がテロ組織に指定されない理由(主任研究員・西恭之)
◎編集後記:中国にとっての「適正速度」

セキュリティ・アイ(Security Eye):

イランがメキシコ麻薬組織を使って駐米サウジ大使を暗殺するか?(主任研究員・西恭之)

 日本人の想像を超える大量殺戮劇が、メキシコ政府当局と麻薬組織の間で展開され、経済的な結びつきの深い日本としても傍観できない事態となっている。そこに、イラン・イスラム革命防衛隊がメキシコの犯罪組織を使って駐米サウジアラビア大使暗殺を企てていたとの米国政府の発表が加わり、メキシコ情勢を見えにくくしている。

 メキシコでは、カルデロン大統領が麻薬組織鎮圧に国軍と連邦警察を投入した2006年12月以来、麻薬組織間の抗争、摘発する軍・警察との戦闘などにより4万3000人が殺害されている。国民にとって殺人や凶悪犯罪がさほどのニュースとは扱われないお国柄だ。

 しかし、今度ばかりは様子が違っている。9月下旬以後、メキシコ湾岸ベラクルスで凶悪で鳴る麻薬組織「セタス」の構成員67人の死体が発見され、今後のメキシコの治安情勢を占うものとして注目を集めている。

 セタスは1990年代末、メキシコ湾岸の麻薬組織「ガルフ・カルテル」に寝返ったメキシコ陸軍特殊部隊員約40人によって結成され、2003年、ガルフ・カルテルの首領が逮捕されたのを機に独立した。

 その後、セタスはガルフ・カルテルの縄張りを奪い取り、内陸部や中米のグアテマラ、ベリーズにまで勢力を拡大し、メキシコの2大麻薬組織の一角を占めるまでになった。日常的に民間人に対する恐喝や身代金目的誘拐を行なっている。

 米国への不法入国をめざすメキシコ人や中米人がセタスの徴用や恐喝に応じない場合、大量虐殺することさえあり、その結果、メキシコを通過する中米人の不法入国者が、2005年から2010年の間に70パーセント近く減っている(メキシコ当局の摘発は43万3000人から14万人に減少)。

 それほど凶悪なセタスだが、その構成員35人の死体が9月20日、ベラクルスの大通りに乗り捨てられたトラック2台から発見された。メキシコの麻薬組織による死体遺棄現場には横断幕が掲げられることが少なくないが、ベラクルスの現場には「市民よ、恐喝に屈するな」「セタスは、ベラクルスから逃げないとこうなる。このプラザはG.N.の土地になった」との犯行声明が残されていた。

 ここに出てくる「G.N.」とは、セタスのライバル組織「シナロア・カルテル」内部の武装組織「ヘンテ・ヌエバ」(新人)を指しているとされる。シナロア・カルテルは、2000年代に太平洋岸のシナロア州から米国西部との国境地帯へと勢力を拡大した犯罪組織だ。

 その数日後、「マタ・セタス」(セタス殺し)を名乗る犯行声明ビデオがインターネットに公開され、犯人像について憶測が飛び交うことになった。ビデオは、テーブルの向こうに並んだ黒いスキーマスク姿の5人の男が「敵はセタスだけだ」「われわれは民間人を恐喝も誘拐もしない」「顔は隠しているが、メキシコ人であることを誇りに思っており、国民のために働く」と主張しているものだった。