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『NEWSを疑え!』第58号(2011年10月24日特別号)

『NEWSを疑え!』第58号(2011年10月24日特別号)
◎セキュリティ・アイ:資源と武器の輸出が映し出す中露の信頼関係(主任研究員・西恭之)
◎ミリタリー・アイ:オバマ政権を動かすシンクタンクの軍備削減案(主任研究員・西恭之)
◎編集後記:カダフィのリビア、カストロのキューバ

セキュリティ・アイ(Security Eye):

資源と武器の輸出が映し出す中露の信頼関係(主任研究員・西恭之)

 ロシアのプーチン首相は、来年の大統領選出馬を表明してから初めての外国訪問として、10月11日から12日まで中国を訪れた。いくつかの商談を成立させ、欧米に対する経済的な発言力を誇示することはできたものの、最大の懸案である天然ガスパイプラインの開通がまたも先送りされ、ロシア製兵器の輸出も発表されず、中国にとってのロシアの重要性の低下ぶりを示す結果となった。

 プーチン首相には160人ものロシアの大企業経営者が同行した。ガスプロム、ロスネフチ(石油・ガス)、ルサール(アルミニウム)など、そうそうたる顔ぶれで、プーチン首相と温家宝首相は、互いの政府系ファンドに10億ドルずつ投資することや、原発推進での協力に合意した。プーチン首相は新華社通信と中央電視台(CCTV)の取材に対し、米国を「ドルの独占的地位にかじりつく『寄生虫』」と皮肉り、債権国として余裕のあるところを見せつけた。

 しかしながら、ロシアから中国へのガスパイプラインを開通させるための価格交渉という5年越しの懸案は決着に至らなかった。プーチン首相は、交渉をガスプロムや中国石油天然気集団公司(CNPC)などの企業に委ねることで温首相と合意、「買う方は安く買いたい、売る方は高く売りたいというのは当然だ」と、いささか言い訳じみたコメントを発表した。

 本来であれば、ガスパイプラインを開通させるための価格交渉は両国にとって合意しやすい案件のはずだ。

 ロシアは、ドイツの脱原発などによって欧州のエネルギー供給に占めるシェアを高めている一方で、欧州以外にもガスの輸出先を求め、中国も米国が海上のオイルルートを簡単に封鎖できることを理解しており、石油とガスの供給路の多様化に努めているからである。

 そうした背景のもと、ガスプロムとCNPCは2006年、西シベリア・アルタイ地方と新疆ウイグル自治区の間、さらにはサハリンと黒竜江省の間にパイプラインを設置することで合意した。

 アルタイ・パイプライン計画では、全長2800キロのほとんどがロシア領内に設置され、シベリア北西部のウレンゴイ・ガス田から南下し、モンゴルの西の中露国境を越えて、中国の西気東輸パイプラインに接続し、毎年300億立方メートルを供給する。サハリンからは、中国国境に近いハバロフスクまで既にパイプラインが開通しており、毎年380億立方メートルを中国に供給可能だ。ちなみに、中国は2020年に800‐1200億立方メートルの天然ガスを輸入する必要があると予測されている。

 問題は双方の強気な価格要求から生じた。ガスプロムは、シベリア北西部ウレンゴイのガスを既に欧州に輸出していることを理由に、欧州と同じ価格を中国側に要求している。これに対して、中国側はロシア以外からもガスを輸入できることを理由に、中国市場の価格で売るようガスプロムに要求している。

 より強気なのは中国で、交渉が長引いている間にカザフスタン・ウズベキスタン・トルクメニスタンとの間にパイプラインを開通させてロシアに対する立場を強め、治安問題があるとはいえ、ミャンマーでもインド洋から雲南省へのパイプライン建設を進めている。2013年以降、この4カ国から毎年合計630億立方メートルを輸入する予定だ。さらに、豪州やカタールから長期契約によってLNGを輸入しているほか、中国国内では大量のシェールガスの発見が続いている。