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『NEWSを疑え!』第62号(2011年11月7日特別号)

『NEWSを疑え!』第62号(2011年11月7日特別号)
◎セキュリティ・アイ:海賊対処。商船は武装する。日本は?(主任研究員・西恭之)
◎ミリタリー・アイ:ソマリア情勢を左右するキスマヨの攻防(主任研究員・西恭之)
◎編集後記:西岡武夫さんのこと

セキュリティ・アイ(Security Eye):

海賊対処。商船は武装する。日本は?(主任研究員・西恭之)

 英国のキャメロン首相は10月30日、BBC放送のインタビューの中で、ソマリア沖を航行する英国の商船に武装警備員の同乗を許可する方針を示した。キャメロン首相は、30日までオーストラリアのパースで開かれた英連邦首脳会議に出席、英連邦54カ国が共有する問題としてソマリア沖の海賊問題を取り上げた。BBCでの発言は、それを受けたものだ。

 英国の新方針は、有効な海賊対策として武装警備員の同乗が期待される反面、日本に国内法整備の課題を突きつける結果となり、日本政府の対応が注目される。

 昨年来、海賊による襲撃事件発生件数と襲撃の成功率は反比例しており、英国の新方針はそれを根拠としている。

 国際海事局(IMB)によると、ソマリア沖の海賊による襲撃事件は、2010年1‐9月の126件から11年1‐9月には199件に増加した。海域ごとの発生件数は、海上自衛隊と各国海軍が商船を護衛しているアデン湾では減少し、アラビア海・インド洋西部・紅海南部に広がる傾向にある。

 IMBなど国際機関が2011年8月に公開した『ソマリアを拠点とする海賊行為に対する防護のベストマネジメントプラクティス』第4版(BMP4)は、スエズ運河、ホルムズ海峡、南緯10度線、東経78度線によって区切られる海域を危険海域(ハイリスクエリア)と定めているが、さらに南の、喜望峰回り航路の要衝であるモザンビーク海峡についても、海賊行為の危険があることを明記している。

 襲撃成功率のほうは、米国沿岸警備隊によると2010年の55パーセントから11年には17パーセントと、大幅に低下している。コンテナ船の世界最大手であるマースク・ライン社によれば、武装警備員を同乗させる商船が増えた結果だという。国際海運会議所(ICS)によると、武装警備員はインド洋の危険海域を航行する商船の約20パーセントに同乗している。

 BBCのインタビューの中でキャメロン首相が指摘した通り、武装警備員が同乗する船が海賊に乗っ取られたことはない。

 たとえばマースク・アラバマ号は、2009年4月に船長が拉致され、米海軍に救出された事件の後で、さらに4回も襲われたが、4回とも武装警備員が撃退している。マースク・ラインの米国籍船がペルシャ湾から喜望峰(ケープタウン)へ14日間で航海する場合、米軍特殊部隊出身者の武装警備員チームを同乗させる費用は7万ドル(約500万円)だという。タンカーやコンテナ船の積荷の価格に比べると、はるかに低コストといえる。

 確かに業界団体であるICSの側には、海賊が商船の武装警護に対抗して攻撃力を増強し、その結果、船員が犠牲になるのではないかという懸念が存在する。しかし、海賊が攻撃力を増強するには、重機関銃などを船に据え付けて多数で行動しなければならず、武器を隠し持って少数で行動する場合よりも発見されやすくなる問題があり、可能性は低いとみなされている。

 制度面から武装警護の現状を見ると、ソマリア沖を航行する船舶の大部分を占めるリベリア・パナマ・バハマなど便宜置籍船国は、民間武装警備員の同乗を許可している。米国やデンマークは、船主を対象に武装警護の許認可制度を設けている。