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『NEWSを疑え!』第64号(2011年11月14日特別号)

『NEWSを疑え!』第64号(2011年11月14日特別号)
◎セキュリティ・アイ:環境派オバマ政権が直面するエネルギー問題のジレンマ(主任研究員・西恭之)
◎ミリタリー・アイ:沿岸海域戦闘艦(LCS)開発は米海軍の足を引っ張る?(主任研究員・西恭之)
◎編集後記:軍事行動には多くの目的あり

セキュリティ・アイ(Security Eye):

環境派オバマ政権が直面するエネルギー問題のジレンマ(主任研究員・西恭之)

 1年後に大統領選を控えたオバマ大統領は、国力を維持するうえで不可欠のエネルギー安全保障と、地球温暖化への懸念から新規の石油資源開発に反対する自らの支持層の板挟みとなっており、その判断が注目される。

 オバマ大統領が抱えるジレンマを表すかのように、米国務省は11月10日、カナダ西部アルバータ州の原油を米南部テキサス州などの製油所に送るパイプライン計画「キーストーンXL」の可否の決定を、2013年まで先送りすると発表した。

 米国の石油自給率は大幅に向上しており、今後の米国の外交・安全保障政策を変えていく可能性を秘めているが、自給率向上の度合いはキーストーンXL計画の行方にもかかっており、その意味でも世界の専門家の関心が高まっている。

 米国の石油自給率は、2005年の40パーセント未満から2010年には53パーセントに改善された。輸入先についても、25パーセントと第1位に躍り出たカナダが、第2位のサウジアラビアの2倍を超える量を供給することとなった。技術革新によって、米本土の頁岩(けつがん、シェール)の層から採取された原油と、カナダ・アルバータ州の油砂(オイルサンド)から抽出された原油が、在来型の原油に負けない価格で売買されるようになった結果である。

 米国の政治家は2001年9月11日の同時多発テロ以来、中東などの敵対的かつ不安定な国々からの石油輸入に依存すべきではないとして、「エネルギーの独立性」をスローガンに掲げてきたが、それを実現するための政策が追いつかない状態に終始してきた。それが、このところの石油自給率の向上により、ようやく「エネルギーの独立性」に目鼻がつくこととなる。

 米国の石油自給率を押し上げた頁岩層の原油(タイトオイル)の商品化は、頁岩層からシェールガスを採取する技術を応用することで可能になった。最初に立坑を掘削し、そこから層内を水平方向に掘進したあと、水を高圧で注入して頁岩を割り、その割れ目からオイルを採取する方式である。

 米国で最大のタイトオイル油田は、ノースダコタ州とモンタナ州にまたがるバッケン・シェールで、日量40万バーレルを超える。その次に大きなイーグル・フォード・シェールとバーネット・シェールはテキサス州にある。

 米国のタイトオイル生産量は、日量90万バーレルで、2020年には日量290万バーレルを超えるとみられる。米国は現在、日量1160万バーレルの石油を輸入しているが、その4分の1を供給が安定しているタイトオイルに置き換えることが可能になるのだ。

 オイルサンドのほうは、原油を含んだ砂岩が揮発成分を失ったもので、水蒸気などを注入すると、重質原油(ビチュメン)を分離できる。このビチュメンを精製する技術が進歩したので、カナダのアルバータ州北部に大量に埋蔵されているオイルサンドの開発が進むことになった。

 問題は、オイルサンドの環境への悪影響が指摘されている点だ。最近まで、オイルサンドは森林を伐採して露天掘りされており、大量の廃棄物を池に貯蔵する必要もあった。さらにビチュメンを精製する過程では、在来型原油の精製よりも多くの二酸化炭素を発生するという問題もある。