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『NEWSを疑え!』第81号(2012年1月16日特別号)

『NEWSを疑え!』第81号(2012年1月16日特別号)
◎セキュリティ・アイ:対イラン経済制裁強化とイスラエルによる空爆の関係(主任研究員・西恭之)
◎ミリタリー・アイ:総統再選でも台湾の防衛戦略は大転換へ?(主任研究員・西恭之)
◎編集後記:いまに始まったわけではない政治家と官僚のいい加減さ

セキュリティ・アイ(Security Eye):

対イラン経済制裁強化とイスラエルによる空爆の関係(主任研究員・西恭之)

 日本で報道されることは皆無だが、欧米諸国がイラン石油の禁輸にむけて経済制裁を強化している背景には、イランに大幅な譲歩を強いることにより、イスラエルによるイラン核施設への空爆を回避しようとする狙いがある。

 イランの主な核施設は、(1)ウラン精鉱(イエローケーキ)を六フッ化ウランに精錬するイスファハンの転換施設、(2)ナタンズのウラン濃縮施設、(3)プルトニウム生産につながるアラクの重水工場、とされてきた。ナタンズは地下8‐23メートルにあり、強化コンクリートで防護され、現在は遠心分離機が8000個稼働しており、国際原子力機関(IAEA)の査察の下で低濃縮ウランを生産している。

 米マサチューセッツ工科大学のホイットニー・ラース氏とオースティン・ロング氏は2007年、イスラエルがこの3施設を空爆するシナリオについて検討し、破壊できる確率が高いと結論づけた。

 イスラエルは2005年までに、長距離攻撃用のF-15I戦闘機とF-16I戦闘機を25機ずつ米国から導入した(その後、F-16Iは100機に増強)。2つの機種の無給油での作戦行動半径は、F-15Iが5000ポンド(2.3トン)のBLU-113爆弾1発と空対空ミサイルを装備した場合も、F-16Iが2000ポンド(0.9トン)のBLU-109爆弾2発と空対空ミサイルを装備した場合も、約1700キロとされる。

 ラース氏とロング氏は、イスラエルからイランへの3つの飛行経路を想定したが、いずれの場合もイスラエル空軍機は関係国の領空を無断で通過することは避けられない。

 第1ルート:地中海上で空中給油後、トルコ領空を840キロ東に進む。その地点から最も遠いイスファハンまでイラン領空を800キロ、イスラエルから合計2220キロ飛行する。

 第2ルート:ヨルダンとイラクを横断して、その地点から最も遠いナタンズまで合計1750キロ飛行する。イラクの防空は米国が担当しており、イスラエル機がこの経路でイランを空爆した場合、米国が支援したという印象を与えるリスクがある。

 第3ルート:アカバ湾からサウジアラビアとペルシャ湾を横断し、その地点から最も遠いナタンズまでイラン領空を700キロ、合計2410キロ飛行する。サウジアラビアまたはペルシャ湾上空での空中給油が必要となる。

 ラース氏とロング氏のシナリオでは、ナタンズの地下のウラン濃縮施設にF-15I(24機)とF-16I(6機)、イスファハンの転換施設にF-16I(8機)、アラクの重水工場にF-16I(7機)を振り向ける。ナタンズの地下のウラン濃縮施設の場合、少なくとも1発のレーザー誘導爆弾が地下施設に達する確率は80パーセントに上るという。

 むろん両氏は、シナリオが楽観的に過ぎることも認めている。