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『NEWSを疑え!』第85号(2012年1月30日特別号)

『NEWSを疑え!』第85号(2012年1月30日特別号)
◎セキュリティ・アイ:ソマリア海賊対策──ソフトな路線は有効か(主任研究員・西恭之)
◎ミリタリー・アイ:米海軍予算が減れば海兵隊も削減される(主任研究員・西恭之)
◎編集後記:議事録の不在──猫の手でも借りてこい

セキュリティ・アイ(Security Eye):

ソマリア海賊対策──ソフトな路線は有効か(主任研究員・西恭之)

 英議会下院外交委員会は1月5日、報告書『ソマリア沖の海賊行為』を公表、新たな海賊対策を提言した。英政府、海運業界、ソマリア専門家、ソマリア出身者、元人質への聞き取り調査に基づくものだ。

 報告書は、イスラム過激派アルシャバブに対するアフリカ連合の軍事的勝利を機会に、暫定連邦政府を国際社会が一丸となって支援するよう求める一方、ソマリアの市民社会との連携による海賊対策の有効性について提言している。

 海賊対策と関連づけられることはほとんどないが、実を言えば、ソマリアは移民と送金によって世界経済とつながっている。

 ソマリア出身者は英国に10万人以上、米国にはミネソタ州などに9万人、カナダに4万人以上、オランダに3万人、北欧4カ国に7万人が移住している。中東の金融センターのドバイでは、ソマリア人はアフリカ系で最大の移民社会を構成しており、貿易や航空業で活躍しているのだ。

 その点を重視した英議会の報告書は、故国ソマリアに送金し、その使い道を注視している移民の視点を取り入れたものとなっている。

 報告書の中でソマリア出身者団体「ワールドG18ソマリア(WG18S)」は、海賊を退去させる条件として、インド洋沿岸のホビョ、ガラカド、エイル及びアデン湾岸のラスコレイ、ヒース、ルガヤの6カ所の港町における雇用創出・保健医療・教育を援助し、漁業取締りと漂着廃棄物の撤去を支援することを提言している。

 ソマリア中部のホビョは、昨年夏までアルシャバブの影響下にあった。その後、ホビョに進出したガルムドゥグ自治政府も、海賊との関係が深い。それは、米海軍特殊部隊が1月25日に救出した欧米人人質の事件でも明らかだ。その北のガラカドとエイルを実効支配するプントランド自治政府も、海賊対策より部族間の平和を優先しているという実情がある。

 ソマリアからの分離独立を主張している北西部のソマリランドは、国際社会の国家承認を得るためにも海賊対策に取り組んでいるが、領域の東と西の端にあるラスコレイとルガヤを実効支配できておらず、WG18Sによると、ソマリランド中部のヒースも海賊の拠点となっている。

 ソマリア系英国人が上記の支援を有効だと考えるのは、2005年以後、ソマリアの海賊が数億ドルの身代金を手に入れる一方、拠点となっている港町には、身代金の30パーセント以下しか分配されず、それも地域による偏りがあり、不満を抱く住民が海賊対策で取引に応じる可能性があるからだ。

 報告書が妥当性を持つことは、1月12日に王立国際問題研究所が発表した英ブルネル大学のアーニャ・ショートランド准教授の分析によっても、裏付けられている。