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『NEWSを疑え!』第89号(2012年2月13日特別号)

『NEWSを疑え!』第89号(2012年2月13日特別号)
◎セキュリティ・アイ(加筆版):パキスタン「核開発の父」がインドと闇取引?(主任研究員・西恭之)
◎ミリタリー・アイ(加筆版):パネッタ構想は原潜から中国の防空システムを狙う(主任研究員・西恭之)
◎編集後記:北朝鮮の核武装とカーン博士と「核の闇市場」

セキュリティ・アイ(Security Eye)(加筆版):

パキスタン「核開発の父」がインドと闇取引?(主任研究員・西恭之)

 アブドゥル・カディール・カーン博士といえば、パキスタンの核兵器開発の責任者でありながら自ら「核の闇市場」の主役となり、ウラン濃縮のための遠心分離機や設計図をリビア、イラン、北朝鮮に売ったことで知られる人物だ。

 そのカーン博士が、自らが「パキスタンへの脅威」だと喧伝してきたインドにも遠心分離機の部品を売却していた疑惑が浮上し、インドの原子力発電への国際協力体制が崩壊する可能性が生まれている。

 カーン博士は2008‐09年、核開発に必要な物資の輸入先として日本がとりわけ重要だったことを、共同通信に対して証言している。無停電電源装置や電子顕微鏡のほか、遠心分離機との関連性が強いため日本政府が輸出を規制している特殊鋼(マルエージング鋼)や特殊磁石(リングマグネット)も輸入することに成功している。

 カーン博士は母国であるパキスタン用に遠心分離機を製造しながら、1987年以後、イラン、北朝鮮、リビアに密輸した。ウラン濃縮技術を北朝鮮のノドン・ミサイルやミサイル製造技術と交換したことまでは、パキスタンの国策に沿ったものだったが、イラン、リビアとの取引は、「核の闇市場」の名にふさわしくカーン博士の私欲のためであった。

 国際原子力機関(IAEA)は2003年、イランの遠心分離機に付着していた高濃縮ウランを発見した。これが「核の闇市場」の存在が発覚したきっかけである。イラン側は、高濃縮ウランが付着していたのは遠心分離機がパキスタン製だからと弁明し、証拠として設計図を提出した。

 2003年末にはリビアのカダフィ政権が、成功の見込みがない核開発を続けるよりも、大量破壊兵器を放棄して米英に経済制裁を解除させることによる利益のほうが大きいと判断し、ウラン濃縮工場に関するノウハウと資機材をカーン博士側から輸入したことを認めた。

 パキスタン当局の尋問が終了した2004年2月4日、カーン博士はテレビで声明を読み上げ、リビア、イラン、北朝鮮への密輸を認めた。しかし、1)遠心分離機の部品の出荷がこの3カ国に届いた量を上回っている問題、2)本人と関係者が「第4の顧客」と呼んだ相手の正体、の2点については、8年後のいまも口を閉ざしたままだ。カーン博士を尋問し、真相を聞き出していると思われるパキスタン政府も、いまのところ沈黙を守っている。

 謎が謎を呼ぶ「第4の顧客」とは何者なのか。

 核拡散問題専門家で米政府顧問のジョシュア・ポラック氏はこのほど、「第4の顧客」がインドである可能性が高い、とする推論を明らかにした。ポラック氏は以下の4点を根拠に挙げている。

1)1980年代末以後、インドが調達した4つの世代の遠心分離機の設計は、カーン博士が技術者として勤務していたオランダから帰国する時にウレンコ社から設計図を盗み出し、パキスタン、リビア、イラン、北朝鮮のために製造したものと酷似している。また南アフリカ当局は2006年になって、「核の闇市場」関係者によるインドへの関連機器の密輸を摘発している。