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『NEWSを疑え!』第99号(2012年3月19日特別号)

『NEWSを疑え!』第99号(2012年3月19日特別号)
◎セキュリティ・アイ(加筆版):日本側が見逃した米政府の「最悪シナリオ」(主任研究員・西恭之)
◎ミリタリー・アイ(加筆版):米海兵隊の大演習、その真の狙い(主任研究員・西恭之)
◎編集後記:国民を保護していない「国民保護法」

セキュリティ・アイ(Security Eye)(加筆版):

日本側が見逃した米政府の「最悪シナリオ」(主任研究員・西恭之)

 福島原発事故独立検証委員会(民間事故調)の『福島原発事故独立検証委員会 調査・検証報告書』は2月27日、菅直人首相が2011年3月22日に近藤駿介・原子力委員会委員長に作成を依頼し、3日後に報告された「最悪シナリオ」の存在を明らかにした。この民間事故調の検証作業によって、当時、日本政府は首都・東京の国家機能の存続さえ危ぶまれる事態を想定したこの文書を公式のものとして扱わず、国家の危機管理の点で禍根を残したことが浮き彫りとなった。

 原子力委員会の『福島第一原子力発電所の不測事態シナリオの素描』は、1号機の格納容器が破損し、放射性物質を放出、作業員全員が福島第一原発から避難を強いられる状況から始まる。作業員が避難して注水が不可能になった使用済核燃料プール4面と2, 3号機原子炉の格納容器も破損し、放射性物質を放出するというものだ。特に、プールが干上がって使用済核燃料が破損すると、溶けた燃料がコンクリートと反応し、大量の放射性物質が放出されるという深刻な事態が生まれる。

 この「最悪シナリオ」は、そうした事態が発生した場合、1)住民に強制移転をもとめるべき地域が170キロ以遠にも発生する可能性、2)年間放射線量が自然放射線レベルを大幅に超えることをもって住民が移転を希望する場合、それを認めるべき地域が250キロ以遠にも発生することになる可能性、があると結論づけている。ちなみに、東京都心は福島第一原発から約220キロ、南関東でも170キロ圏に含まれる地域もあり、首都・東京における国家機能の存続が危ぶまれる想定となっていた。

 ところが今年3月8日になって、昨年のほぼ同じ頃、米国では日本のものとは対照的で、楽観的とさえいえる「最悪シナリオ」が作成されていたことが明らかになった。

 米国側の「最悪シナリオ」はジョン・ホルドレン科学技術担当大統領補佐官が中心となって作成したもので、2011年4月まで国家安全保障会議(NSC)アジア上級部長だったジェフリー・ベーダー氏が、新著『オバマと中国の興隆──インサイダーが語る米アジア戦略』(未発売)のさわりの部分を発表したことで、その存在が明らかになった。

 ベーダー氏は出版元のブルッキングス研究所での講演と、外交専門誌『フォーリン・アフェアーズ』のウェブサイトで、当時の状況を以下のように明かしている。

1)日本政府は、東京都民を避難させる必要が生じる可能性のシナリオを、米政府と共有しなかった。

2)自分が恐れたのは、放射能の拡散に関する不確かなシナリオに引きずられて、東京近郊の米軍基地の兵力が削減ないし撤退に追い込まれ、日本を根拠地とする米国のアジアにおける軍事的プレゼンスが低下することだった。

 福島第一原発の状態を科学的に予測できるようになるまで、米政府は東京圏の米国人9万人全員の避難を計画する必要に迫られた。その情報はすぐに漏れて、米軍人を対象とするメディアと日本のメディアは、米政府が東京から米国人を強制避難させる可能性があると報じた。

 自分は海軍制服組トップのゲイリー・ラフヘッド作戦部長に電話し、情報漏洩は残念であり、気まぐれな意思決定によって日米同盟の将来を危険にさらしてはならないと申し入れた。1時間もしないうちにラフヘッド作戦部長はペンタゴンで記者会見を開き、米軍は東日本から退避することはないと断言した。