- 『NEWSを疑え!』第151号(2012年10月1日特別号)
- ◎テクノ・アイ:日本はなぜ、福島第一原発の廃炉にスパコンを使わないのか(静岡県立大学グローバル地域センター特任助教・西恭之)
◎編集後記:流言飛語(小川和久)
◎テクノ・アイ(Techno Eye):
日本はなぜ、福島第一原発の廃炉にスパコンを使わないのか(静岡県立大学グローバル地域センター特任助教・西恭之)
9月28日、日本の国家プロジェクトとして開発されたスーパーコンピュータ「京」(神戸市の理化学研究所計算科学研究機構に設置)について、学術・産業用の共同利用が始まったが、世界が一様に首をかしげていることがある。
なんと、スパコン「京」の能力を最大限に活用しなければならないはずの東京電力福島第一原発の廃炉が、共同利用のテーマとして挙げられていないのだ。この日本的ともいうべきスパコン活用のあり方は、「京」が性能を競ってきた米エネルギー省のスパコンの活用事情と比べると、日本の後進性が際立つものだ。
スパコン「京」は毎秒の演算速度1京回。開発中の2011年にTOP500ランキングで世界1位に輝いたが、2012年6月、米国の「セコイア」(演算速度毎秒1.6京回)に抜かれ、世界2位となった。
セコイアは、IBMが米エネルギー省国家核安全保障局のため開発し、核兵器開発で有名なローレンス・リバモア国立研究所に設置されている。
スパコン「セコイア」(ローレンス・リバモア国立研究所)
専門家の間では常識となっていることだが、米エネルギー省のスパコンは1997年以後、年2回のTOP500ランキングで23回も世界1位の座を占めてきた。
その米エネルギー省のスパコンの用途は、いわずと知れた核兵器の維持管理だが、ここ10年ほどの間にスパコン活用の重点が変わったことは、意外に知られていない。